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眠り姫問題について

 最近、眠り姫問題なる思考実験を知った。面白いので、自分なりに考察してみた。

 

 概要はググるなどしてもらうとして、

「コインが表だった確率はいくらか?」

 という質問に答えるなら、自分だったら1/2と答える。

 理由は、他の1/2を主張する人たちと同じで、眠り姫は実験中に起こされたとき、新しい情報が何もないから、1/2と考えるしかないと思うからだ。

 そもそも当たり前だが、実際に実験を複数回やったり、被験者を何人も集めてやれば、コイントスの結果はおおむね表と裏が半々になるし、実験終了後にコインの表裏を確かめてみれば、そのことが確認されるだけだ。

 モンティホール問題や二人の子供問題のような、実際に特定の条件で確率が変わっている。というような事実が、眠り姫問題にはない。1/3というのは、感覚的にそう感じるだけであって、実際のコインの表裏の確率は1/2でしかない。

 

 すると、

「実際に100回実験を繰り返し、さらに質問を『コインは表裏どちらか?』に変えることを想定する。コインの表裏が半々の50回50回出たとすると、表の時は50回起こされて、裏の時は100回起こされることになる。質問に対し、表と答えたときは50回正解するが、100回不正解になる。裏と答えたときは100回正解し、50回不正解となる。表と答えたときの正解率は1/3であり、1/2ではない」

 というようなことを大発見したかのように言う人が現れるが、そんなことは当たり前だし論外だ。

 コインが裏のときは起こされる回数質問される回数回答する回数が表の時の2倍なのだから、それを全て数え上げたら正解回数不正解回数に差が生じるのは当たり前のことだ。

 これに対し反論するのは簡単で、

「表と答えたときの確率が1/3になった原因は、コイントスで表が出る確率が1/3になったからか?」

 と言えばよい。これにイエスと答えたらそれは一番やばいタイプの奴なので、IQが違うから話が通じないと思って議論を諦めるほかない。

 繰り返しになるようだが、表の正解率が1/3になった原因は、明らかにコインが裏の時に多く回答しているからだ。記憶をなくしている眠り姫がわから言えば、多く回答させられているから、と言ってもよい。

 

 ただ、1/3という答えそのものが間違いなのかというと、そうでもないとは考えられる。だからこそ意見が分かれてパラドックスめいてくるのだと思うわけだが。

 要するに1/3というのは、

「眠り姫が起こされたときに有り得る状況の中で、今が(表・月)である割合」

 のことだから、

「有り得る状況の中で、コインが表でいま月曜日である割合は?」

 と質問されれば、1/3と答えてよいと思う。

 有り得る状況、というのは、眠り姫が起こされる、月曜か火曜かコインは表か裏かということで、(表・月)か(裏・月)か(裏・火)のことだ。それぞれ左からABCとするとして、そのうちAの割合は? と聞かれたら1/3で問題ない。算数だ。

 ポイントは、この1/3は、それぞの状況が起こる確率ではないということだ。1/3派は、そこを混同するから、もとの質問の、コインが表だった確率は? の答えをも1/3だとしてしまう。

 

 眠り姫から見て、日曜日に薬で眠らされたあと、起こされて質問されたということは、今の状況が(表月、裏月、裏火)のどれかだと考える(考えることができる)のは間違いない。そしてそのとき、それぞれの状況である確率は(1/2、1/4、1/4)となる。その根拠は以下。

 眠り姫が起こされたとき、

「今が月曜日で、かつコインが表だった確率は?」

 と質問されたとする。今が、コインが表で月曜日、であるための条件は、コイントスで表が出ることだけだ。表が出ていれば、火曜に起こされることはないから、今が月曜日であることが確定する。そしてコイントスで表が出る確率は1/2だから、質問の答えも1/2となる。

「今が月曜日で、かつコインが裏だった確率は?」

 と質問されたらどうか。今が、コインが裏で月曜日、であるための条件は、コイントスで裏が出て今が火曜日ではない、ことだ。コイントスで裏が出る確率は1/2だ。月曜なのか火曜なのかは判明しないが、眠り姫から見て、どっちのほうが起こりやすいということもないから、どちらも同じ確率だと考えられる。ので、月曜日の確率も火曜日の確率も1/2だ。だから(コイントスで裏の確率1/2×月曜日の確率1/2=1/4)ということで、質問の答えは1/4だ。

「今が火曜日で、かつコインが裏だった確率は?」

 の質問の答えも、同じ計算で1/4となる。

 そして追加で、

「今が月曜か火曜のどちらかで、かつコインが裏だった確率は?」

 という質問の答えを考える。コインが裏で、今が月曜か火曜のどちらかであるための条件は、コイントスで裏が出ることだけだ。コインが裏ならば、月曜と火曜の両方起こされることが確定するから、どちらかはわからなくても、月曜か火曜のどちらかであることは確かだ。なので、答えは1/2となる。(1/2×1=1/2)と考えてもよい。

 そして(表かつ月曜日の確率1/2)と(裏かつ月曜か火曜のどちらかの確率1/2)を足し合わせると1になり、全ての事象の総和が1となってすっきりする。まあ1になるのは当たり前なのだが。

 この場合の、(表かつ月曜日の確率1/2)と(裏かつ月曜か火曜のどちらかの確率1/2)というのは、そのまま(コインが表だった確率)(コインが裏だった確率)としてよいと思われる。1/2という数値の根拠が、それぞれコイントスで表が出る確率、裏が出る確率であるからだ。

 よって、もとの問題の質問、

「コインが表だった確率は?」

 の答えも1/2が妥当であり、正解であろうと思われる。

 

 補足だが、以上のことについても、以下のような反論がある。

「(表月、裏月、裏火)が(1/2、1/4、1/4)であるのなら、100回実験を繰り返し表50裏50となったとき、それぞれの回数は(50,25,25)になるはずだが、実際は(50,50,50)になる。このことから、表月は全体の1/3なので、答えは1/3」

 というようなものだが、これは、

「1/4は、起こされたそのときに、裏月または裏火である確率であって、実験1回あたりに、裏月か裏火という状況が発生する確率ではない」

 からだ。

 眠り姫から見て、起こされたその時というのは、コインの表裏も月曜か火曜かもわからない。コインが裏だったのならば、月曜も火曜も100%起こされるわけだが、コインが裏だと仮定しても、今、が月曜なのか火曜なのかはわからない。なので、月曜なのか火曜なのかは、1/2の確率でどちらかだ、と判断するほかはない。

 実験1回あたりの、それぞの状況の発生確率で言うなら(1/2,1/2,1/2)となる。裏月、裏火、というのはコインが裏だったならば必ず起こることなので、それぞれの発生確率はコイントスで裏が出る確率と同じだ。

 これらを足し合わせると3/2になってしまうのでおかしいと思うかもしれないが、これはこれで正しいと言える。裏月と裏火の発生確率が1/2、1/2なのは、裏月も裏火も、コイントスで裏が出た、ときに起こる同一の事象だからだ。眠らされて起こされる、というプロセスを挟むことで、別の事象と感覚的に誤解しがちだが、裏月と裏火は独立していない。裏月と裏火のどちらかだけが起こるということはない。だから、表記するのなら(表月、裏{月火})とでもすればいいだろうか。これをそれぞれ1/2とすれば、数値的にもおかしなところはない。

 この考え方ならば、実験日数を1万日にしたり100万日にしたりする、いわゆる極限の眠り姫、というバリエーションでも、感覚的な違和感を覚えずに済む。

 1/3派の主張に従うならば、実験日数を1万日にすると、コインが表だった確率は1/10001となってしまうので、いくらなんでもおかしいと感覚的に思うはずだ。しかし(表1日目)の確率は1/2で(裏1日目~10000日目)の確率も1/2と考えればすっきりする。

 コインが裏だと仮定したとき、今が1日目である確率は1/10000で、今が2日目である確率は1/10000で…となるわけだ。1日目から10000日目のどれかである確率は10000/10000となる。コインが裏でかつ1日目から10000日目のどれかである確率は10000/20000となり、約分して1/2だ。

 実験日数を何日にしようが、実験回数を何回にしようが、実験人数を何人にしようが、コインの表裏の確率は1/2と考えることができ、すっきりするし、実際にコイントスで表と裏が出る確率はそれぞれ1/2なのだから、それとも反していない。

 

 しかし1/3派にはまだ反論がある。1万日や100万日の実験を考えた場合によく考えられることだが、

「コインが裏のときのほうが起こされる回数が多いから、起こされたそのときはコインが裏である確率が高いと考えられる」

 というものだ。

 それは感覚的には確かにそう思えるだろう。しかしそれはやはり感覚でしかない。そんな気がするけど実際は1/2だからパラドックスなのだ。

 眠り姫目線で見たとき、起こされたそのときの状況は、

「表で月曜か、裏で月火のどちらか」

 でしかない。1万日実験だとしても、

「表で1日目か、裏で1万日中の何日目か」

 でしかない。

 1万日実験で、実際にコインが裏が出ていたときのことを考えてみる。

 眠り姫は1万日毎日起こされて質問されて眠らされるを繰り返す。しかし感覚的には、常に眠らされてから初めて起こされたように感じるはずだ。例えば実際には5468日目だとしても、最新の記憶は5469日前に実験の説明を受けた日の記憶だ。眠り姫目線ではコインが表の可能性は常に等しく、裏の可能性も常に等しい。

 そのことから、以下の1/3派の主張も反論できる。

「眠り姫は起こされることで、今が月曜か火曜のどちらかであることを知る。それは新しい情報だ」

「起こされたことがヒントになって、裏の確率が高いと考えられる」

 これらのことは、実験の前日に説明されていることだから、新しい情報ではない。眠り姫は起こされて質問されることで、

「説明通りならば今は月曜か火曜のどちらかだ」

 と思うだけだ。眠って起きたという行動が挟まったからといって、実験前に受けた説明の情報の価値が変わるわけでもない。起こされたときの眠り姫の最新の記憶は、常に実験前日の説明を受けた日の記憶だ。

 そしてなんならば、眠り姫は実験開始前、説明を受けた直後から、今私がしているような、そしてこれまで眠り姫問題を考察してきた多くの人と同じような考察をすることができる。つまり、今このブログを書いている私は、実験の説明を受けた直後の、実験開始前日の眠り姫であると言うことができる。

 今私はコイントスで表が出る確率は1/2であることを知っている。眠らされたあとのコイントスの結果で、1回起こされるか2回起こされるかが違うようだが、起こされたときに、コインが表だった確率はいくらか? と質問されるようだ。

 これに、1/2以外の答えを言う理由があるだろうか。

 これは、事前確率が1/2だと言っているのではない。事後確率も条件付き確率も存在しないと言っている。

 起こされたとき(表月、裏月、裏火)の3パターンのどれかであることも実験前からわかっている。その3パターンのどれか1パターンの確率(割合)は? と聞かれれば1/3だろう。しかしそれはコイントスの確率ではない。起こされたそのときは、コイントス1/2の確率にしたがって(表月)か(裏月火)のどちらかであるだけだ。その状況はコイントスの結果に依存して発生するものだから(表月)の確率は1/2だし、コインが表だった確率は? の答えも1/2となる。

 

 ここから自分なりに考えた別バージョンを書いていく。1/2という答えありきで考えているから、バイアスがかかってなにか間違っているかもしれないが、眠り姫問題のもとの問題の本質は変わっていないと思う。

 

 薬は使わないし眠ったり記憶がなくなったりもしない。

 コイントスはする。表と裏の確率はそれぞれ1/2とする。

 ABの2枚のカードを用意する。文字は一面にしか書かれていないから、裏返して伏せておくと文字は見えない。

 コイントスをして、表が出たらAのカードを裏返しで被験者の前に置く。

 コイントスをして、裏が出たらAとBのカードを裏返しで被験者の前に置く。ただし、AとBのカードは寸分たがわず同じサイズであり、それを全くのズレもなく2枚重ねの状態にされる。また、厚みを確認することもできないとする。つまり、見た目には1枚に見える状態である。

 さらに、AとBのカードは、1/2の確率でAが上になり、1/2の確率でBが上になるものとする。

 

 さて、いまコイントスが行われ、カードが自分の前に置かれたとする。コイントスの結果も、カードの文字もわからない。そこで質問される。

「コインが表だった確率はいくらか?」

 

 とまあ、Aのカードは月曜日に、Bのカードは火曜日に対応しているわけだ。なおかつ、Aのカード1枚のときは(表月)に、ABのときは(裏月)に、BAのときは(裏火)に対応している。

 この問題の場合、1/3派でも1/2だと答える人が多いと思われる。置かれるカードのパターンは3パターンあるわけだが、Aのカード1枚だけ置かれる確率が1/3ではないことはわかるだろう。1/2でA1枚で、1/2でABかBAのどちらかだな、と直感というより体感的にわかりやすいと思う。

 要はもとの眠り姫問題も本質的にはこれと同じことと思うのだが、弱点もある。

 眠り姫問題の場合、月曜日のあとは必ず火曜日になるわけだが、上のバリエーションだと、ABのあと必ずBAにもなる、ということがない。質問を2回するということもない。

 もうちょい色々考えればもっと適格なバリエーションが生み出せそうな気はする。

 

 ただ、このバリエーションでも、カードの置かれるパターンで言えば、そのうちコインが表で出てくるパターンはA1枚パターンだけであり、それは3パターンのうちのひとつだから、3パターンのうちコインが表で出てくるパターンが占める割合、でいえば1/3となるわけで、眠り姫問題と同様の考え方はできる。

 それに、それがコインの表の確率や、表月の確率とは違う、というところも同様なので、もとの眠り姫問題がどうしても1/3と錯覚してしまう人に、わかりやすいバリエーションとして提示するぶんには、ひと役買ってくれそうな気もする。

 

 長くなったが、これでいったん締めたいと思う。なんにせよ、眠り姫問題の正しい回答は1/2だ。