小説を書いた 第四章
第4章
それから半月が経過した。
アルテナとフレイアは、訓練場で対峙している。そう今日は、約束の日である。
当時の話とは違い、フレイアはすでにサンシャインに正式加入している。が、1か月後にもう一度手合わせをしようと言ったその約束だけは果たそうという2人である。
「あんまし情けねー戦いしやがったら、気が変わって抜けちまうかもしんねーぞ」
フレイアは意地悪げに笑いながら言う。
「そうはさせないさ」
アルテナも自信ありげににやりと笑う。
この半月、フレイアは正式に加入したことで、より積極的に既存メンバーの3人に関わるようになった。前衛のアルテナだけでなく、中衛、後衛のダール、ミリアムとの連携も意識し、4人全員で訓練に励んだ。
クエストは控え、パーティの戦力の底上げに全員で努めた。朝からトレーニングをはじめ、昼は食事とたっぷりの休憩。午後もトレーニングして、夕方には切り上げて食事して、またたっぷり休憩。
食事睡眠運動。それらを意識的にしっかりと繰り返すことで、わずか半月ほどであっても、パーティはそれぞれ実感するほどにレベルアップした。それには、ややくすぶっていたその前の半月が下積みになっている面もあった。フレイアの実力を知り、さらに自分たちの現状を認識する。ただブロンズに降格しただけではない、意味がそこにはあった。
「2人ともいいか? 号令いくぞ」
1か月前同様、ダールが号令役をやる。ダールは右腕をあげ、
「3、2、1、はじめ!」
振り下ろした。
刹那、フレイアは地面を蹴り、アルテナとの間合いを一気に詰める。1か月前と同様……ではなかった。アルテナも、はじまりの合図と同時に地面を蹴り、フレイアに向かっていたのだ。
「!!」
一瞬、虚を突かれたフレイアだが、すぐさま右拳を繰り出す。このまま命中すれば、アルテナも勢いよく前進してる分、痛烈なカウンターとなる。が、アルテナは左腕の盾を突き出し、そのままフレイアに突撃した。
フレイアの右拳が振り下ろされる前に、アルテナの盾はフレイアの体を押し飛ばす。
「シールドバッシュ!」
観戦しているミリアムが思わず口にした。
後方に飛ばされたフレイアは咄嗟に踏ん張って、転倒まではしなかったが、体勢を崩された。そこに、すでに次の動作に入っていたアルテナの剣撃が迫る。
フレイアの左の肩口に向かう剣。
(入る!)
アルテナがそう思った瞬間、フレイアは左に体を傾け、右半身を引いて、なんと間一髪アルテナの一撃をかわした。
かわされたことに驚くアルテナ。しかも、渾身の一撃だったために、今度はアルテナが前方につんのめるように体勢を崩しかけた。
一瞬、アルテナから見て、右の死角にフレイアが消える。
(しまった——)
右側からのフレイアの攻撃を予期しつつ、急いで向き直る。
しかしアルテナの予想は外れて、フレイアの攻撃は来なかった。それもそのはず、フレイアは、慌てて回避行動をとった勢い余って、尻もちをついていたのだ。
アルテナはそれも驚いたが、しかし好機。
フレイアは当然急いで立ち上がろうとする。
しかし、そのフレイアの鼻先に剣先が突きつけられる。
動きを止める両者。わずか数秒の立ち合いだったが、2人とも肩で息をしている。
一部始終を見守ったダールとミリアムは、口を開けて固まっている。
フレイアは悔しそうに歯を食いしばっている。アルテナは、びっくりしたような顔をしているが、少しずつ勝利を実感して、徐々に笑みが浮かんでくる。そのアルテナの顔を見て、フレイアも笑った。
「やられたぜ。おめーの勝ちだ」
そう言いながら、突きつけられた剣……木剣の切っ先を手でおさえて降ろさせた。
「うおお!」
「勝った……!」
との言葉は、ダールとミリアム。ダールはガッツポーズをしている。今はフレイアもパーティメンバーとはいえ、やはりアルテナに肩入れしてしまっていた。
「いや。一撃目を避けられるとは思わなかった。完璧に狙い通りだったのに。まだまだ私の動きが鈍いということだ」
フレイア自身から、勝利を宣告されたにも関わらず、アルテナは満足していないようだ。一度は顔が緩んだが、厳しい顔に戻している。
「謙遜するなよ。以前のおめーだったら、最初のシールドバッシュを俺に当てられてねーと思うぜ。スピードは段違いにあがってるし、パワーも感じたぜ」
「人読みが効いたからだ。前の手合わせのときのイメージで、1点読みしていたから。もう1度勝負したら、勝てないだろう」
アルテナの考えは正しくはあった。もう一度立ち合ったら、フレイアは今のアルテナの力と速さを踏まえて、つまり情報をアップデートして臨んでくるし、同じように開幕突進をしてくるとは限らなくなる、となれば、アルテナの勝機は薄くなる。先ほどの勝負は、前回のアルテナのイメージを持ったままのフレイアに対し、前回のフレイアの動きをイメージして対策をしたアルテナが優位に立てたに過ぎなかったのだ。
「ま! 今回に関しちゃ俺の負けだ! これでもちょっとは悔しいんだぜ?」
立ち上がったフレイアは、しかし嬉しそうにアルテナの肩に腕を回した。勝負に敗れたのに、勝者側が不満を述べているのは気持ちよくはない。
「あ、ああ。そうだな。すまない……これで、心置きなくパーティに迎えられるよ」
「はははっ! やっぱ気にしてたのか! おめーのことだからそんなことだろうと思った!」
アルテナは、自分からスカウトしたフレイアが加入して、願ったりかなったりだったわけだが、1か月後の立ち合いで勝利したらという条件がなあなあになって、なし崩し的に加入の流れになったことを気にしていた。だからこそ、言ってしまえば不必要になった今回の立ち合いだったが、アルテナとしてはこだわりたいところだった。
フレイアも、そのことを汲んでいたからこそ、快く立ち合いに応じたのだ。
肩を組んでいる2人に、観戦していた2人も駆け寄った。
「みんな。少々くすぶってしまったが、これからクエスト再開と行こう。まずはサンシャイン、シルバーランク復帰だ!」
リーダーアルテナは言った。3人は頷く。
ブロンズランク降格の憂き目を見た半月前のあの日以降、研鑽を続けてきたサンシャインの4人は、ここからの飛躍を自らに誓った。
一方、アルテナと半月ぶりの再会をした翌日の朝、エントはギルドにてカイとスイと合流した。
「エントさーん! 会いたかったっす!」
相変わらず屈託のないスイが、エントに抱き着いた。エントはびっくりする。その態度の違いに、サンシャインのメンバーらと比べてもしまう。
こちらも1週間ぶりの再会となった。
「エントさん。スタークさんのお手伝いはどうでしたか?」
カイが、飼い猫をあやしているかのようなエントに尋ねる。
「あ、ああ。望み通りの成果が得られたよ。正直、そううまくいくとは思っていなかったんだけど」
エントの返答に感心する2人。目をきらきらさせながら、
「クエストいきましょうクエスト! ウチらも、エントさんの付与魔術でめっちゃパワーアップっす!」
とスイは言う。
というわけでクエストを受注しに受付へ向かう。ただエントは、昨日サンシャインとやりあっていたのを受付嬢にも見られていたから、なんとなくバツが悪い。昨日のことを2人の前で注意されるのもイヤだ。そんな風に考えた。
しかし受付嬢は、そんなエントの心情を知ってか知らずか、そのことについては特に言及せず、淡々と事務をこなした。
「お三方はユニーククエスト成功の実績がありますし、失敗なしであれば、あと2つクエストを成功させればシルバーランク昇格ということになると思います」
「ふむふむ」
「ウルフ討伐なんてどうでしょう? 動きの速いモンスターですが、皆さんなら問題ないかと」
受付嬢の勧めに、3人は頷いた。
「それでいきます」
そしてサンライズの3人はさっそく、ウルフの群れが棲みつきだしたという森の中。放置しておいたら農村部の家畜の被害や、下手をしたら人的被害も出るかもしれないということで、討伐にやってきた。
(五感強化!)
カイとスイに五感強化を付与するエント。
「ふううう~! これこれ……!」
「あ~クセになりそう」
2人はある種快感でも感じているような表情で、ぞくぞくと体を震わせる。
「ははは。それじゃ、僕も自分にかけてみよう」
エントはそう言って、首にかけたネックレスを対象にする。
王都でのいきさつは2人に説明済みだ。カイとスイは注目して見守る。
「最初、慣れるまで目と耳が痛いっていうか、ちょっとびっくりすると思うんで、気を付けてください」
「わかった」
カイが忠告をし、エントは頷いた。
(五感強化!)
その瞬間、エントの胸元にあるネックレスの石が輝く。
「んあっ」
カイとスイが初めて五感強化を施されたときと同じリアクションをとるエント。
まず、一気にあたりが明るくなったような感覚。急激にまぶしさを感じる。そして、周囲の音が明確に聞こえる。大きく聞こえるわけではないが、風の音というより空気の音、そばにいる2人の呼吸音や心臓の鼓動、草木が揺れる音、虫が動く音、普段なら気にも留めないし聞こえもしない音が、それぞれ明確に認識できるかたちで耳に入ってくる。
目を閉じ、耳を塞ぐ。そうせずにいられない。しかしそうしても、肌に触れる衣服の感触、顔を撫でる空気の感触がざわざわと感じられる。それに、鼻腔を突く空気の匂い、土の匂い、草木の匂い。
「ふうううう~!」
大きな深呼吸をして、目と耳を塞いだまま体を震わせるエント。
すでにその感覚がわかっている2人は、少し笑ってそれを見ている。
深呼吸をしながら、ゆっくりと目を開け、手を離す。しかしその後も何度かぱちぱちと目をしばたかせる。
以前2人に五感強化を付与したときは、目の前でリアクションを見ていて、いったい何が起きているんだと不思議に思うしかできなかった。が、今自分が体験してみて、なるほどこういうことかとエントは思った。
「あはっ……確かに、これは、やばいね」
以前の2人と同じように、語彙力がなくなってしまったエントは照れくさそうに言いながら2人のほうを見た。その2人は満足そうに微笑んでいる。
「ですよねですよね?」
感覚を同じくしたことを無邪気に喜ぶ。
最初の強烈な刺激が落ち着いてくると、目がくらむような感じはなくなり、目に映るものがとてつもなく鮮明に見えるようになった。ざっとあたりを見回すだけでも、木、草、岩、石、土、それぞれがくっきりと見える。色のコントラストも強調されているような感じで、風景全てが鮮やかだ。
聞こえる音も、強化直後は、突然あたり全体から騒音が発せられたかのようだったが、落ち着いてくると、ひとつひとつの音をクリアに認識できる。木々がざわめく音の中の、虫の声の方向や距離がわかる。
「ごめん待たせたね。それじゃ行こうか」
ある程度落ち着いたエントは言った。
「うっす。そんじゃあ、こっちです」
スイはこともなげに方向を定めて動き出した。カイも追従する。エントも続くが、目的の討伐対象のウルフの居所をすでにつかんでいるらしいスイとカイの天性の感覚の鋭さに、改めて驚嘆した。
森の中に分け入っていくと、確かにウルフたちがいた。途中から、エントもそれらしい気配を感じ取っていた。五感強化のおかげであるが、やはり素の感覚が鋭敏な獣人にはかなわない。ウルフの発見にしても、かなり遠くからである。ウルフ側からは完全に意識の外の距離だ。
そしてエントは、身体強化を付与して、もともと高い獣人の身体能力が、あえて俗な言い方をすれば、バカ高く強化される。リフレクトスライムのとき同様、地面を蹴ったカイとスイは一瞬でウルフとの距離を詰める。
ウルフとて、獣人ならぬ獣そのものだ。気配を感じる力や、嗅覚などは人間よりはるかに優れている。そのウルフたちが、何か来る、と感じたとき、すでにそれは自分たちに襲い掛かってきていた。
「ワンコたち、ごめんよっと」
鋭い牙と爪を持つウルフたちを、子犬扱いにする2人。次々に強烈なパンチとキックが命中し、一撃でのしていく。
ウルフたちは反撃せんと大きく口を開けて飛び掛かるが、がちんと上顎と下顎が合わさる音がするのみだ。と思えば、次の瞬間には横から打撃を喰らってあえなく昏倒する。
あっという間に、残りは2頭となり、その2頭はとてもかなわんと尻尾を巻いて逃げ出した。追撃することは容易だったが、カイとスイは見逃した。
その頃になってようやくエントが追いついた。自分にも身体強化をかけて参戦するつもりだったが、2人が圧倒的すぎたので魔法の無駄打ちになると判断し、通常状態で追いかけたのだ。
「いや凄いね、キミたち。でも、逃げたのはいいの?」
「大丈夫でしょう。ウルフは基本的に、強い者がいるところは縄張りにしようとしないので、これだけこらしめておけば自然といなくなります」
カイは解説した。獣人ならではの、獣の知識なのだろうか。
そういえばとエントは、倒れたウルフたちを見た。どうやら全てのびているだけで、生きているようだ。あれだけ素早く動き回りながら、絶妙な力加減だ。そのことからも、2人の格闘センスの高さがうかがえ、エントは改めて感心する。
「いちおう、ちょっと離れて、しばらくの間観察してていいですか? 目を覚まし次第、移動すると思うんですが、それを見届けないと、農村部の脅威が去ったとは報告できないんで」
カイは続けて言った。もっともなことだ。
「ああ。もちろん」
エントはこたえた。
3人は、ウルフが目覚めたときに気配を察知されず、しかしこちらからは様子を観察できる程度に距離を取って待機する。
待っている間、エントはカイとスイに話しかけた。
「それにしても、前も思ったけど、キミたちは本当に速いし、強いね」
「え!? えへへ。……なに言ってんすか! エントさんの付与魔術のおかげですよ!」
「いや、前も言ったけど、サンシャインのメンバーに同じ術をかけてたときも、ここまでとんでもなく速く動けるようになるなんてなかったんだ。やっぱり、もとの能力が高いから、術の効果もより顕著になるんだと思う」
「じゃあ、私たちがもっと強くなれば、エントさんの術もより効果を増すってことですか?」
「そうなると思う。いわゆるシナジーってやつかな」
「ん? キノコがどうしたんすか?」
「それはシメジ」
スイのボケにカイが突っ込む。
それはともかく、
「いちおう現在個人シルバーの僕から見て、2人は通常でシルバーいけるくらいすでに強いと思う。で、付与魔術使った状態なら、もしかしたら現時点でゴールド並なんじゃないかな……?」
エントは言った。
「ええっ? ホントですか?」
カイもスイも驚いたような反応をするが、まんざらでもなさそうな顔もしている。
エントの言葉はお世辞ではなかった。自身はゴールドランクにあがった経験はないが、サンシャインで活動しているときも、ブロンズランクは苦戦しなかった。これからシルバーランクで活動だというときになって追放されたわけだが、シルバーランクのクエストをやっていくあたって、実力的な不安は感じなかった。ゴールドランクもいずれあがれるだろうと思っていた。
それと比べて、今のサンライズ、というよりカイとスイは、そのとき以上の実力を感じる。当分はノンストップで連戦連勝、あっさりゴールド昇格、なんてこともあるのではないだろうか。
「エントさんにそう言われると、自信つくっす!」
スイは相変わらず屈託なく笑う。
一緒にいて気持ちのいい、裏表のない素直な2人。エントもまた、素直に2人を応援、協力したくなると思った。この2人と、冒険者を続けて、いけるところまでいけるといいな、などと。
エントはそのとき、一瞬アルテナのことが脳裏によぎった。何故、今思い出す? そう思案しはじめると、
「あ、起きますよ」
というカイの声が聞こえた。
倒れていたウルフたちは弱弱しく起き上がり、全員が起き上がると、まだ打撃の痛みが残っているのか、よたよたというような足取りで森の奥へ消えていった。
「これでもう大丈夫ですね」
「というわけで、ウルフ討伐完了! っす!」
スイが満面の笑みで両握りこぶしを突き上げて喜びを表現する。いつも真面目でちょっとお堅い雰囲気のカイもこういうときはノリよく同じポーズをする。そしてエントも、楽しげな2人にならって、ちょっと遅れて真似をする。
サンライズとしてパーティを結成してからの、初めてのクエストクリアとなった。そして当然のように、これがこれからの連戦連勝、躍進の足掛かりとなるのだった。
さて、再びサンシャインである。
アルテナとフレイアの一騎打ちの後、控えていたクエストを再開させようとギルドを訪れるサンシャイン。
ギルドに入り、受付のカウンターに歩いていく。その途中、そのときギルド内にいる他の冒険者がサンシャインのメンバーに気付く。
以前なら、
(あれが銀麗のアルテナか)
(めっちゃ美人だな。それでいて強いとか最高だな)
(俺もあんな美人と一緒に冒険者やりてえなあ)
などという、ある意味下卑た賞賛の声が聞こえていたものだが、
「落ちぶれパーティのお出ましだぜ」
「ここんとこ見なかったから辞めちまったのかと思ってたぜ」
「追放されたエントってやつが入ったパーティが今、勢いあるんだろ? 有能なやつ追放して落ちぶれてりゃ世話ないな」
「てかエントってやつが凄かっただけのパーティなんじゃね」
今はそんな、嘲笑混じりの悪口ばかりが聞こえてくる。
良い気がしないのは当然で、アルテナは平静を装うが、内心悔しく、拳を強く握る。
露骨にイラついているのはミリアムだ。氷魔法を操る、少女のような見た目のエルフの彼女だが、案外直情的である。
逆に普段、粗暴な振る舞いを見せるフレイアだが、そういった他人の風評などどこ吹く風といった様子で気にしない。
ダールは、そんな3人の様子を見ている。
「気にすんなよ」
ダールはアルテナに声をかける。
「こいつらもまとめてこれから見返してやろうぜ」
そう言って笑顔を作るダール。
「そうだな」
アルテナも笑って頷いた。
カウンターにつき、クエストを受けたい旨を告げるアルテナ。
「現個人シルバーランクのフレイアさんが正規メンバーになったとのことですが……他3名は降格したばかりですし、今はブロンズランククエストを斡旋することになります」
少し気まずそうに言う受付嬢。
「まあそれは仕方ないな」
充填期間を経て、実力をつけたつもりなだけに、シルバークエストといきたいところではあるが、ギルド規定もあることなのでしかたがない。
結局、無難なブロンズクエストを受けた。
「楽勝だな。 てか、てんで歯ごたえがないわ」
スライム討伐を請けたサンシャインは、こともなげにクエストを成功させた。フレイアが思わず呟く。
その後もサンシャインは、立て続けにクエストを成功させる。ブロンズランクなど、どうということはないというわけだ。
3連続でブロンズクエストを成功させ、さらにはシルバー昇格をかけたクエストに挑む。とはいえなんのことはないブロンズランクだ。これも難なくクリアし、サンシャインはシルバーランクへ返り咲いた。
一度は返却したシルバーのドッグタグを再び受け取るアルテナ。前回は、その後にエント追放というひと悶着があったが、今回はそのような心配もない。
シルバーランクを維持していたフレイア以外、ダールとミリアムにドッグタグを渡し、
「ここがスタートだ。皆でゴールドランクにいこう」
アルテナは自信に満ちた笑顔を浮かべながら言った。メンバーたちも同じ表情で頷く。
——このとき、サンライズはすでにシルバーランクに昇格しており、シルバーランククエストを2つ成功させていた。
第4章 完